カルト・ミュージック・コレクション CULT MUSIC COLLECTION



Como una ola de fuerza y luz / Luigi Nono 力と光の波のように

e0111398_3161759.jpgこのblogでは、現代音楽は決して難解ではない、と書いてきたが、これは難解である。しかし俺にとっては、まさに、このような音楽が現代音楽だ。聴いていて全く心地よくない。不安を掻き立てられるようだ。気の弱い人は夜に聴かない方がいい。俺は就寝前にうとうとしながら聴いていて、胸が苦しくなった。危険である。ピアノはマウリツィオ・ポリーニ、オーケストラはバイエルン放送交響楽団、指揮はクラウディオ・アバド。

「Como una ola de fuerza y luz」はルイジ・ノーノの代表作で、邦題は「力と光の波のように」とされる。全部で7楽章からなる29分58秒の曲。「for soprano, piano, orchestra and tape」となっており、磁気テープを利用した一連の作品群のひとつである。オーケストラか声なのか、またはテープの音なのか判然としない音のかたまりが盛り上がり、「ルシアーノ!ルシアーノ!」と叫び声にも似た女性ソプラノが轟く。そして歌または朗読ともとらえることができるテキストがあらわれる。

このCDにはイタリア語、ドイツ語、フランス語、そして英語によるテキストが載せられている。「ルシアーノ!ルシアーノ!この国の壊滅的な風の中で、多くの人々が苦闘する世界において、あなたは革命とともに成長を続けるでしょう。」といったテキストは、チリの革命家ルシアーノ・クルツに捧げられている。ノーノが共産主義や社会主義に傾倒していた時代の作品である。

そして曲はピアノの粗暴な連打音に続いて、オーケストラとテープの混沌とした音の洪水に覆い尽くされていく。破壊的な音で脳髄はかき回され、絶望の淵に追いやられる。再び女性ソプラノが歌い、そして最後にはオーケストラとピアノ、テープ音が三つ巴となって立体的な音空間を作り上げる。なんと恐ろしい音楽なのだろう。

2曲目の「..... sofferte onde serene ...」は「.....ソッフェルテ・オンデ・セレーネ...」とそのまま書かれることもあるが、「.....苦悩に満ちながらも晴朗な波...」と邦訳されることもある。ピアノとテープによる13分58秒の曲だ。この曲では録音テープは比較的控え目に使われており、ポリーニのピアノが中心となっている。

3曲目はテープのための「Contrappunto dialettico alla mente」で、邦訳は「知的認識への弁証法論理による対位法」とされる、19分51秒の曲。これは「磁気テープのための」とあるが電子音楽ではなく、音の素材として一人の女性ソプラノ、そして4人の声が使われている。切り刻まれ、加工され、貼り付けられた声が、音のコラージュのようである。

このCDはグラモフォンから「20th century classics」として発売されたもので、デジタル・リマスターされている。これはドイツ盤であるが、同じものがポリドールから日本盤でも出たらしい。現在は廃盤になっているようだが、テキストを日本訳で読みながら聴きたいものだ。(20061222/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)
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by cultmusic | 2006-12-22 03:11 | 現代音楽
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