カルト・ミュージック・コレクション CULT MUSIC COLLECTION



Arbos / Arvo Part

e0111398_323167.jpgアルヴォ・ペルトの音楽は宗教的である。背景として単旋聖歌やグレゴリオ聖歌などの古楽があり、実際に彼自身、宗教に傾倒していたようであり、内容的にも宗教的なものが多い。しかし「宗教音楽」という言葉はいささか不親切である。交響曲や室内楽曲といった分類ではなく、主題としての「宗教音楽」という言い方はわかりにくく、とりわけ日本人には理解し難いところがある。

そのアルヴォ・ペルトの音楽は、有名な「タブラ・ラサ」をはじめ、いくつかの作品を聴いたが、中でも一番の感動を与えてくれたアルバムは、この「アルボス」だ。まず冒頭のタイトル曲「アルボス」の神々しさに打ちのめされる。楽器群が一斉に叫び出し、ひとつひとつの音色が自己主張をしながら、全体として混沌とした音空間を構成し、一丸となって迫ってくる。曲の冒頭から終末まで、高まりも弱まりもしない。心臓が鼓動をうつように、脈々と奏でられる楽器の音に、この曲は永遠に続くのではないか、と思わせられる。時間の概念を超越した感覚を味わうようだ。

「An den Wassern zu Babel」はソプラノ、カウンター・テナー、テナー、バリトン、そしてオルガン伴奏による声楽曲。まさに聖歌的な神々しさにあふれている。「Pari Intervallo」はオルガン曲。ぽつりぽつりと変化するオルガンの音は、「アルボス」とはまた違った意味で永遠の時を感じさせる。この曲を耳にしながら、ふと、「惑星ソラリス」の流れる水に漂う水草が瞼の裏に見えた。「De Profundis」は再び声楽曲。こちらはパーカッショニストも加わっている。ここでのパーカッションはあくまでも曲の味付けとして控え目に鳴らされているが、深く地の底から響くような不思議な音である。このように声楽曲と器楽曲が交互に配置され、次に「En sang vor langen Jahren」はバイオリンとビオラの伴奏によるアルト独唱曲へと続く。

「スンマ」はアルヴォ・ペルトの作品の中でもよく知られたものである。ここではソプラノ、カウンター・テナー、テナー、バリトンの4声合唱で行われる。再び洪水のような「アルボス」が演奏され、最後はソプラノ、カウンター・テナー、テナーの3声と、バイオリン、ビオラ、チェロによる「スターバト・マーテル」で終わる。テーマ曲「アルボス」とは対極的に、じわりと心にしみる曲である。まさに神とともにある音楽だ。

「アルボス」は「樹」と邦訳される。録音は1986年と1987年。このCDはECMから1987年に発売された西ドイツ盤だ。(20070106/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)
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by cultmusic | 2007-01-06 03:00 | 現代音楽
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