フランク・カニモンドとリン・マリノのことを知ったのは、あるジャズのコンピレーションCDからだった。このコンピレーションCDを手に入れたのも偶然で、たまたま放出セールをやっていたWebのCDショップで、気まぐれに100円の値段がついたものを何枚か購入した中にあった。そのCDには、独特のハスキーな女性ボーカルの軽快な曲、一度聴いたらもう忘れることはできない魅力的な曲があった。それが「フィーリン・グッド」だった。
このコンピレーションCDで聴くまではフランク・カニモンドという名前を知らなかったが、有名なジャズ・ピアニストらしい。アメリカ、ペンシルバニア州のピッツバーグで生まれ、6歳の頃からクラシックピアノを習い始め、後にジャズピアノを弾くようになる。すでに10代前半で、ピッツバーグ周辺のクラブでジャズピアノを弾くようになる。19歳のときには、アトランティックシティーやマイアミなど多くの都市をツアーした。ピッツバーグでは有名なクロフォード・グリルというクラブでよく演奏した。また若きジョージ・ベンソンともステージをよく共にしたという。
またフランク・カニモンドはジャズピアノの教師としてのキャリアもある。デュケーヌ大学やピッツバーグ大学、カーネギー・メロン大学で教えたそうだ。また1980年代には「Cunimondo's Keyboard Jazz Supper Club」というクラブをピッツバーグでもっていた。1989年にはピッツバーグで「ベスト・ジャズピアニスト」に選ばれた。
一方で魅惑的なボーカルを聴かせてくれるリン・マリノについては詳しいことがわからない。物憂げに、気だるく、甘えたような幼い声は他にたとえようのない魅力がある。このCDにある簡単な解説によると、この録音の当時リン・マリノは19歳であったそうだ。CDの帯には「ピッツバーグが生んだ『もうひとりのブロッサム・ディアリー』の知られざる名唱が、いま蘇る」とある。だがブロッサム・ディアリーほどの素人くささはない。
俺が夢中になった「フィーリン・グッド」はもちろん、他にも素晴らしい曲がたくさんある。「フィーリン・グッド」はフランク・カニモンドのオリジナルではなく「Bricusse / Newley」のクレジットがある。このCDでは一曲目の「ラブ・ソー・ファイン」だけがフランク・カニモンドのオリジナルだ。この曲もいい。
このCDは2000年にサウンドヒルズレコードから発売された日本盤だ。録音は1960年代末、ピッツバーグ、とだけ、ある。(20070501/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)