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カルト・ミュージック・コレクション CULT MUSIC COLLECTION



Ladies of the Canyon / Joni Mitchell

Ladies of the Canyon / Joni Mitchell_e0111398_124275.jpgジョニ・ミッチェルは1943年、カナダのアルバータ州フォート・マクリードという町で生まれた。母は教師、父はカナダ空軍のパイロットだった。そのため戦中は両親とともにいくつもの基地を転々としたという。戦後には父が食料品店をすることになって、11歳のときにはサスカチェワン州最大の都市であるサスカトゥーン市に落ち着いた。ジョニ・ミッチェルはこのサスカトゥーンを自らのホームタウンであると思っているようだ。

7歳のときからピアノのレッスンを受けた。そして作曲することに天性の素質を見出した。また学校では美術にも才能をみせた。そして英語の先生からは「あなたは筆で絵を描くように、言葉を綴ることができる」と言われたらしい。

このアルバムは、名作「ブルー」に先立つサードアルバムだが、音楽的なスタイルはこのアルバムで既に完成していると言っていい。2本のギターを使った伴奏にのせ、写実的に、夢見るように歌う。「ブルー」の刺すような緊張感はないが、それだけに味わい深い。

有名な「サークル・ゲーム」の歌詞は素晴らしい。またクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングが歌って有名になった「ウッド・ストック」もいい。しかしアルバムのオープニングにふさわしい「モーニング・モーガンタウン」、リズム感のある「会話」、タイトル曲の「レディズ・オブ・ザ・キャニオン」、ロック的なリズムの「ビッグ・イエロー・タクシー」などジョニ・ミッチェルらしさの感じられる曲がたくさんある。

ジョニ・ミッチェルのことを「女のボブ・ディラン」と言われることがあるらしい。そのように思ったことはほとんどなかったのだが、このアルバムの「プリースト」を聴くと、ジョニ・ミッチェルにもボブ・ディランの影響があるのではないか、と感じるところもある。

「フォー・フリー」や「アレンジメント」のように、成功しスターダムにのしあがった自らの姿に戸惑っていることも素直に歌になっている。「フォー・フリー」はストリートのクラリネット・プレイヤーを歌ったもので、この曲を聴いて、クラリネットが吹きたくなった。

このアルバムは1970年に発表された。このCDはワーナー・ミュージック・ジャパンから「フォーエバー・ミュージック」シリーズとして発売された日本盤だ。(20070510/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)
# by cultmusic | 2007-05-10 01:09 | ロック・フォーク

Clouds / Joni Mitchell

Clouds / Joni Mitchell_e0111398_1401819.jpg名作「ブルー」からジョニ・ミッチェルの世界に足を踏み入れた俺にとっては、どうしても「ブルー」との対比で他のアルバムをみてしまうところがある。「ブルー」はジョニ・ミッチェルにとって4枚目のアルバムであり、このアルバムは名作「ブルー」の前々作、ジョニ・ミッチェルのセカンドアルバムである。サウンド面でいえば、「ブルー」がアコースティックギターを伴奏にした曲とピアノを伴奏にした曲を織り交ぜてバリエーションを出していたのに対して、このアルバムではアコースティックだけのシンプルなものである。またそのギターも、ブルーでは2本のギターを複雑にからませたものであるのに対して、このアルバムではどちらかといえばトラッドでシンプルな伴奏といえる。

歌詞については「私は判っている」と邦題のついた「I Think I Understand」と「年老いていく子供たちへ」とされる「Songs To Aging Children Come」以外は基本的に愛の歌である。ここで歌われる愛は、基本的にはそれぞれに完結した愛の物語であり、「ブルー」で歌われるように人生そのものをテーマにし、愛と格闘し、矢尽き刀折れる、といった激しいものではない。

ジョニ・ミッチェルの歌は、聴きやすいと言えるかもしれない。「ブルー」は何かをしながら聴く、ということができないアルバムだ。たとえBGMとして流していても、必ず心を奪われるとげとげしい存在感があるが、このアルバムは比較的素直に「歌」を楽しめるものであるといえる。

発展途上である、という印象のアルバムだが、これはこれで、いい。このアルバムは1969年に発表された。このCDはワーナー・ミュージック・ジャパンから「フォーエバー・ミュージック」と題されたシリーズの一枚で日本盤だ。歌詞と対訳があるのがありがたい。(20070509/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)
# by cultmusic | 2007-05-09 01:40 | ロック・フォーク

Crash Diagnostic / DISCOUNT

Crash Diagnostic / DISCOUNT_e0111398_21209.jpg1997年に衝撃的なファーストアルバム「Ataxia's Alright Tonight」を発表したディスカウントのサードアルバムである。ファーストアルバムにおける天衣無縫な荒々しさはディスカウントの大きな魅力だった。そしてバンドのメンバーが生き生きと演奏し、ライブの中から練り上げられた曲は魅力的だった。セカンドアルバム「Half Fiction」では落ち着いた演奏をみせてくれたが、ファーストアルバムで感じた魅力は残念ながら半減していた。

ロックバンドというものは、ひとつのマジックである。それぞれに個性的で技術のあるミュージシャンが集まっても、必ずしも素晴らしいバンドになるとは限らない。また技術的にも経験も未熟なメンバーが集まったとしても、ひとつのバンドとしてまとまったときに途方もないエネルギーを出すことがある。これがロックバンドの面白さであり、最大の魅力である。

このディスカウントの場合はどうか。ファーストアルバムの荒々しさは、テクニックよりもやりたいことが先にある傍若無人なギターと、「へたうま」と言いたいくらい幼い女性ボーカル、そして「リズムを保つ」という言葉を知らないかのように早くなったり遅くなったりするどたばたドラムが大きな魅力であった。このアルバムではベースがJames ParkerからTodd Rockhillへと変わったが、他のメンバーはファーストアルバムから同じである。確かに上手くなった。しかしバンドとしての輝きは、ファーストアルバムでみせてくれたほどの眩しさを感じない。

このアルバムが悪いと言っている訳ではない。演奏は堂々としており、まさに順風満帆の貫録である。曲もバラエティに富み、それぞれに個性的でスピード感も失われていない。特にボーカルのAlison Mosshartの成長が著しい。素人くささがなくなり、ロックシンガーの歌い方になっている。それでいてキュートな魅力はちゃんと持っている。ある意味でこのアルバムは、落ち着いてじっくりと味わうことができるものである。

残念ながらこのサードアルバムを残して解散してしまうディスカウントだが、俺たちには記録された3枚のアルバムを、気の済むまで聴く幸せが残されている。このアルバムは1999年の7月にInner Ear Studiosで録音された。(20070508/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)
# by cultmusic | 2007-05-08 02:01 | パンク

Half Fiction / DISCOUNT

Half Fiction / DISCOUNT_e0111398_1154985.jpgこのバンドを「パンク」と呼ぶことが正確かどうか自信がないが、あえて分類するとなると、やはり「パンク・ロック」なのだろう。このアルバムはディスカウントのセカンドアルバムである。メンバーはファーストアルバム「Ataxia's Alright Tonight」と同じ。ベースがJames Parker、ボーカルがAlison Mosshart、ドラムがBill Nesper、ギターがRyan Seagristだ。

ファーストアルバムに比べて明らかに音が洗練されている。はっきりと違うのはギターの音だ。ファーストアルバムでは比較的ナチュラルなディストーション・サウンドであったものが、このアルバムでは強くソリッドに歪ませた音になっている。これは好みが分かれるところだろう。ファーストアルバムの若々しい突っかかるような音が好きだ、という人も多いに違いない。

もうひとつの違いは、ファーストアルバムで荒々しく暴れまわっていたドラムと、ごりごりと弾きまくっていたベースがおとなしくまとまっていることである。ディスカウントの魅力はキュートなボーカルと曲の主導権を握るギターにあるのは間違いないが、ファーストアルバムでみせたドラムとベースの荒々しいリズムも魅力があった。だからこそバンドが一体となって演奏しているという感動があったのだが、このセカンドアルバムでは、リズムを押さえることを意識し、あえて派手なプレイを避けているように思える。

その意味ではやや物足りないところも感じるが、リズムがシンプルなだけに疾走感があり、ボーカルとギターの魅力を前面に押し出したアルバム、というかんじだ。なお付け加えると、6曲目「Pocket Bomb」、7曲目「Keith」、9曲目「Stale Laughter Fake Smile Soup」などでは暴れまわるドラムもみせてくれる。

録音は1997年の6月。Morrisound StudiosでSteve Heritageによって行われた。Additional EngineeringとしてMitchell Howellの名前がある。またアートワーク、ペインティング、ドローイング、タイピング、レイアウトのすべてをアリソンが行った、とある。このアルバムは1997年にTank Musicから発売された。(20070507/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)
# by cultmusic | 2007-05-07 01:11 | パンク

Barbeque Dog / RONALD SHANNON JACKSON AND THE DECORDING SOCIETY

Barbeque Dog / RONALD SHANNON JACKSON AND THE DECORDING SOCIETY_e0111398_1522919.jpgロナルド・シャノン・ジャクソンはオーネット・コールマンのプライム・タイムでドラムを叩き、ジャズの歴史上重要なアルバム「ダンシング・イン・ユア・ヘッド」と「ボディ・メタ」に参加した。またジェイムズ・ブラッド・ウルマーの「アー・ユー・グラッド・トゥ・ビー・イン・アメリカ」やビル・ラズウェルの「ベースライン」にも参加した。またアルバート・アイラーやセシル・テイラーのアルバムに参加したこともある。

リーダー・アルバムとして日本で有名なものは「マン・ダンス」であるが、これはロナルド・シャノン・ジャクソン名義のアルバムとしては4作目である。この「バーベキュー・ドッグ」は続く5作目のアルバムにあたる。その大胆さ、斬新さ、エネルギッシュな演奏などあらゆる点において、俺はこのアルバムを、ロナルド・シャノン・ジャクソンの初期のベストアルバムだと確信している。

タイトル曲「バーベキュー・ドッグ」をはじめ素晴らしい曲が並ぶが、中でも俺のお気に入りは、とぼけたスピード感がある「ユーゴ・ボーイ」、そして独特の浮遊感をもつ「ホエン・チェリー・ツリーズ・ブルーム・イン・ウインター、ユー・キャン・スメル・ラスト・サマー」である。これ以外の曲も、リフが実に印象的で魅力がある。リフにからむインタープレイも素晴らしく、バンドとして有機的にうまく機能しており、各ミュージシャンの個性が存分に発揮されている。

ロナルド・シャノン・ジャクソンはアメリカ、テキサス州フォートワースで1940年に生まれた。数多くの革新的なアルバムに参加し、自らのバンド「デコーディング・ソサエティー」を結成したのは1979年である。セッションアルバムにおけるドラムプレイも見逃せないが、やはりリーダーアルバムが最ものびのびと叩いている気がする。日本ではアルバムが手に入れにくく、このCDも何年も探し続けて苦労して手に入れたのだが、できる限り追い続けたいミュージシャンのひとりだ。

このアルバムは1983年に発表された。1983年の3月にイギリス、ロンドンのジャム・レコーディングというスタジオで録音され、4月にアメリカ、ニューヨークのエレクトリック・レディ・スタジオで編集されたとある。デコーディング・ソサエティのメンバーとして、ドラムがロナルド・シャノン・ジャクソン、ギターがヴァーノン・リード、ベースがメルヴィン・ギブス、ソプラノとアルトサックスとしてゼイン・マッセイ、フレットレス・エレクトリック・ベースとしてリバーンド・ブルース・ジョンソン、トランペットとしてヘンリー・スコットの名前がクレジットされている。(20070502/yoc/カルト・ミュージック・コレクション)
# by cultmusic | 2007-05-02 01:51 | ジャズ


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